88人が本棚に入れています
本棚に追加
ここは私が統べる龍族が住む国。
青龍、黒龍、白龍、赤龍、そしてそれらの頂点に龍王。
私は龍王貴族の直系。
産まれながらにして龍王になるべき地位にいた存在だった。
しかしそれは、自分自身が望んだ物ではなかった。
前王が病気になり私が後を継いだ。
ただそれだけの事だった。
力の強さがものをいう龍の世界。
私は疎まれた、ただの龍王という名の人形だった。
周りには前王の側近たちが取り巻く。
だがその者たちも思惑の中にいた。
あの頃の私は、力も意志もなにもない。
ただ親の力だけで生きながらえていた。
・・・お前なんか、前王がいなければただ虫けら同然だ・・・
・・・そうだ、お飾りだけの龍王・・・
そう囁かれる日々。
父や父の側近は他の龍に危害を加えられようとも、助ける事はなかった。
命に別状がなければ、それでいい。
その程度。
反対に私が抵抗出来ない程弱い方が好都合のようだ。
私は死なない程度に生かされていた。
そして前王も思惑の中にいた。
自分の長い間の立ち位置が覆るのが嫌だった。
たくさんの龍の上にたち、見下す地位。
この場所を手放すのが嫌だったのだ。
だから、自分の子どもに地位を譲った。
現王の父という、上の立場のまま君臨する為に。
そう、自分の私利私欲の為だけに私は利用された。
父と子の間に愛はない。
利用価値があるだけの存在。
愛情という言葉はそこには無用なもの。
最初のコメントを投稿しよう!