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「ここで何をしているの?」
私の腕の中、少女は私を見つめた。
幾分か体温が上がってきた身体。
少し赤身を帯びた顔。
大きな瞳が揺れていた。
「ここの枯れ葉を全部綺麗にしなさいって言われて。」
初めて聞いた少女の声。
ゆっくりとしたリズム。
少し舌足らずのしゃべり方。
少女から奏でる音色のなんと気持ちいい事か。
「また、あいつらの嫌がらせか。」
巫女がくると、こぞって嫌がらせをしていた。
それをいつもは、黙って見るだけだった。
無関心な私の目には何も映ってはいなかったのだ。
しかし今回は何故か、そうは出来なかった。
「部屋に入ろう。
ここはお前にとっては寒すぎるだろう。」
そう言って建物の中に入ろうとする私。
しかし一向に動く気配がない。
「私はいけません。
言いつけが終わるまでは帰れないのです。」
「なぜ?」
「そうしないと、私はまた酷い目に・・・」
良く見ると服から出ている肌には、たくさんの傷の跡が刻まれていた。
それを見た私の心はなぜか酷く胸が苦しくなった。
何なんだこの息苦しさは?
この少女を助けたい。
これ以上傷つけたくない。
私は自分の右腕をその少女から離すと頭上に高々と上げた。
そして次の瞬間一気に降り下ろした。
バーン!
シューッ!!
凄まじい風を切る音が聞こえた。
思わず目を閉じた少女が次に見た景色。
それは枯れ葉もその上に降り積もっていた雪も、全て消え去った風景だった。
何事もなかったかの様な、いつもの風景。
雪さえもが何処かへ消えさっていた。
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