静かな山村、仁淀川町

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「部屋の鍵はここに置いときます。後はごゆっくり。お夕飯は18時頃になります」 「ありがとうございます。あ、あの……」 「はい。何です?」 「池川神社って、この前の道を行ったところですよね?」 「えぇ、そうです。ただ、歩いて行くにはえらい時間かかりますよ? 歩いて行くがです?」  ここの人達にしたら、あの距離はとても遠く感じるのかもしれない。でも、車で来た感じで、私の足ならそんなに時間はかからないと思う。せいぜい15分と行ったところだろうか。 「そのつもりです。車で行っても停めるところなさそうですし……」 「ほいたら、役場の前に駐車場がありますきに、そこまで乗ってったらえいと思いますよ? 歩いて行くにはげに大変や思います。何やったらうちの車で積んで行きましょうか?」  積んで行く……?  何か物を運ぶのだろうか? いや、でも今のニュアンスだと私の事だと……。 「い、いえ。大丈夫です。歩くのには慣れてるし、地図で見る限りそんなに遠くなさそうですから……」  丁重に断ると、女将さんは感心したように目を瞬きながら頷き返した。 「都会の人はようけ歩く言うけんど、ほんまながやねぇ……」 「そ、そうですね」 「都会程ようけ車は通らんけんど、気を付けて行って来てくださいね」 「ありがとうございます」  女将さんが部屋を後にすると、私は荷物を片隅に置き直してもう一度窓から外を見てみた。  暑いには暑いけど、すぐ真下が川のせいか吹く風は心地いい。それにとっても静かなのも落ち着く。でも、数日ここにいたら暇を持て余して飽きちゃうんだろうなぁ。コンビニなんて当然ないし、街灯もポツポツとしかない。
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