静かな山村、仁淀川町

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 いくら夏場は日が長くなっているとは言え、夜になると街灯のない道を歩くのは怖いに違いない。何せ、川の音しか聞こえないような暗闇をのこのこ歩くのは危険だから、動くなら日のある内。  川に降りるのは明日にするとして、今日は一番池川神社に参拝に行ってこよう。  私は小さい鞄に貴重品だけを入れて民宿を後にした。  道なりにまっすぐ、仁淀川町の中を歩いて行くと、公民館や小さな喫茶店、酒屋さん、民家などが軒を連ねている。  家の裏手はすぐに急な山になっていて、そこを畑として切り開いている人もいれば、切り開いた土地の庭で作物を育てている家もある。  基本的に、ここは外から仕入れるというよりも自給自足が当たり前の場所なのだと言う事がよく分かる。だって、誰の家にも大なり小なり畑が必ずあるんだもの。  ふと、目の前を歩いてくるお婆ちゃんは背中に大きな籠を背負っていて、通り過ぎざまにチラッと見てみると中には沢山の山菜が入っていた。  山菜の詰まった籠を腰の曲がったお婆ちゃんが運んでいる姿を見ていると、余計なお世話かもしれないけど手伝わなきゃいけないような気になった。
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