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緑の山に囲まれ、谷合には清流。山肌に沿うように軒を連ねる家とお茶畑。山を縫うようにして走る舗装された道路。
それらを見つめているとふっと吹いた風の中に、都会ではまず感じる事なんて出来ない自然の匂いが私を包み込み、目を閉じる。
「……っ!?」
何となく閉じた瞼の裏に、一瞬見覚えのない古い村の風景と着物を着たお侍さんが数人見えて、私はパッと目を見開いた。
今のは一体何なのだろう? 一瞬見えた村の風景はとても古くて……そう、言うなれば江戸時代のような、そんな感じだった。
「今のは、何だったの……?」
この景色が、どこかで見た古い写真か何かと被って見えて突然それがフラッシュバックしたのだろうか?
私は目を瞬きながら落ち着きなく周りを見渡し、よく分からないまま暮れかけた太陽を見て私は慌てて神社のある後ろを振り返った。
「そうだ! こんな事してたら夜になっちゃう。早く参拝しちゃわないと!」
現実に引き戻された私は、石段を登り切る。
石段を登ると、手水舎が左手にあり、目の前には比較的大きな神社が現れ建物の一角には舞台のようなものが見える。
「凄く静か……。さすがにこの時間じゃ誰もいないか」
私はぐるりと周りを見渡して、手水舎で身を清める。
口にハンカチを咥えてから、洗った水が綺麗な水の中に落ちないように気を付けつつ右手に柄杓を持って左手を洗い、柄杓を持ち替えて今度は右手を洗う。また逆の手に持ち替えて左手で水を救い、それで口を濯いでお清めは完了。
柄杓に残った水は柄杓を立てて水が柄を伝うように洗い流し、伏せて元の場所に戻す。
ハンカチで手を拭きながら社に向かって足を進めると、ここでもやっぱりきちんとしたマナーに乗っ取って参拝を済ませる。
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