46人が本棚に入れています
本棚に追加
/209ページ
昼間通ったはずの道なのに、全然違うように見えるのはどうしてだろうか。
点々とある街灯も切れかけて、チカチカしていたり光が弱かったり……。変な人が出てきても絶対おかしくない。
それでも私は鈴の音が聞こえて来る方へ、音だけを頼りに懐中電灯で足元を照らしながら歩いて行った。
「……ここからだ」
私が音に近づく度に、大きな音になる。
音を辿って来た場所は、昼間来た池川神社の石段の下だった。
石段の上は真っ暗で先が見えない。まるでここを登ったら二度と戻って来られないような、そんな雰囲気が拭えなかった。
持っていたライトで照らしてみても、やっぱり上までは見ることが出来ない。
鈴の音は確かにこの上から聞こえる。不気味で怖くて普通なら行こうなんて思わないんだけど……。
私はしばらくその場に立ち止まり、登るかどうかを逡巡していた。けれど、意を決して階段に足をかける。
「何となくだけど、今行かなきゃいけない気がする」
ゆっくりと歩を進めて階段を登ると、音はさらに近づく。そして息を切らしながら頂上まで登り、顔を上げると私は思わず目を見張った。
月と星の淡い光が地上に降り注ぐ中、昼間見た社の舞台の上にすらりとした長身の青年が、神楽鈴と扇子を手に息を呑むほど華麗な舞いを踊っていたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!