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悲しき舞子、狸奴2
「また黒川の血を引く者とここでこうしてお会いする事が出来て良かった。主の血は、ちゃんと今日まで継承されていたのですね」
口元に小さく笑みを浮かべどこか安堵したような表情を浮かべた狸奴に、私の胸は小さく痛んだ。
あれ……? なんでチクッとしたんだろう……。
私は不思議に思い、自分の胸元に手を当ててみるが原因がよく分からない。
「400年もの間、たった一人でここを守っていたの?」
「はい」
気づいたら、頬に熱い物が伝い落ちていた。
私は慌てて頬に手を当ててみると月明かりを受けて光るそれを見て、自分は今涙を流しているのだと気づく。
「あ、あれ? 何で?」
別に悲しくもなかった。何でもなかったはずなのに、目からは堰を切ったように涙が溢れ出て止まらない。
ボロボロと零れる涙を何度も拭っている内に、胸の内からこみ上げてくる原因の分からない切なさに押し潰されそうになった。
「……ごめ……っ、ごめんなさい」
何でそんな事を言い出したのか分からないけれど、何故か謝らなければならないような気がして、彼に対して謝った。
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