同じ言葉、匂い……思い出される記憶

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「いやぁ! この子猫、尻尾が長いやんか!」  おヨネが作った柔らかく煮た粥を冷まして懐から出された幸之助に少しずつ食べさせていると、それを見たおヨネは頓狂な声を上げた。  真吉の手の中で両手両足をピンと伸ばし、もぞもぞと動かしている幸之助の尻尾は確かに長い。  この時代の猫と言えば大抵三毛猫で尻尾は丸い方が当たり前だった。  長い尻尾の猫は滅多に見かけない為、尾の長い猫は妖怪の「猫又」になると人々は信じていた。だからこそ、おヨネも複雑な表情を浮かべたのだ。 「この子猫、将来猫又になりゃあせんかえ?」  彼女の言葉に、真吉は思い切り不機嫌そうに顔を顰め、幸之助をぎゅっと抱きしめる。 「そがな事言うなや。よう見てみぃ。どっからどう見たち、こじゃんち可愛いやろが? こがな子が猫又なんぞになりゃあせんちや」  抱きすくめられた幸之助は、真吉の懐の中で声を上げて暴れまわる。 「おお、すまんすまん」  暴れる幸之助を慌てて自分から引き離し、お腹いっぱい食べさせてもらってまん丸く膨らんだ腹と「みいみい」と元気を取り戻して泣き叫ぶ姿を見て、ニッコリ笑う。  しかし、おヨネはそれでも納得がいかないのか、顔を顰めたままだ。
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