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仮説ドッペルゲンガー 3
「つまり、過去にドッペルゲンガーを見た人は、ドッペルゲンガーに関わらず死ぬことが決定していたってこと?」
ユウタが父に確認すると、
「そうだ」
と、父はうなずいた。
「じゃあ、つまりドッペルゲンガーって何なのさ?」
今度はハヤタが尋ねた。
父は咳払いを1つして、
「そこだよ。父さんは、ドッペルゲンガーってのは、つまり、死を望んだ人や、死を予感した人の見るもう1人の自分なんだと思うんだ。自殺を考えていた芥川はもちろん、リンカーンも自分が暗殺されるかもしれない予感があったとされている。そういう死を間近に控えた人間がドッペルゲンガーに遭遇するんじゃないのかな」
2人に向かって、そう仮説を述べた。
「なるほどね。確かに筋は通ってるな」
ユウタはうなずきながら、
「死を予感した人間や、自殺を考えてる人間は、どうあれ、スゲー死の恐怖を抱くだろうし、……恐怖から逃げるために恐怖を感じる人格を分裂させるとか、なんか、そんなマンガ読んだことあるな」
そう告げた。
「でも、待った」
しかし、ハヤタは納得していない様子だ。
「それだと俺たちのどっちかが自殺を考えてるか、死を予感してるってことになるぜ」
「そうだな。それでドペタは俺たちのどっちかの死への恐怖ってことになる」
ユウタもハッとする。
ユウタとハヤタは揃って、ドペタのいる風呂の方を見た。
そこにはひょっとしたら自分達の抱く死の恐怖が……。
『あ~~、生き返る~~』って感じの、もしくは『人生最高』って感じの、風呂上がりのドペタだった。
「「……父さん……?」」
「みなまで言うな。父さん、もうすぐドッペルゲンガーが見えそうだ」
「お父さん。足の匂いが風呂場まで届いてるから、先に足だけでも洗ってちょうだいね」
ふと、母が言っていた。
「よし。ドッペル見えた。完全に見えたぞッ」
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