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「あら、お客さんなんて珍しい」
ませた口調の少女は、スケッチブックと鉛筆を持って私の隣までやってくる。
「私は絵を描いていたのよ。あなたは何をしていたの?」
私はカメラを指さして「写真を撮っていたんだ」と答えた。私のコレクションの1部を渡すと、少女はそれを楽しそうに眺めた。そして私は、瞳を輝かせる少女の横顔にシャッターを切った。
「将来は写真家になるのね? だってこんなに素敵なんだもの!」
私は恥ずかしくなって、膝を抱えるように座り直した。
「違うよ。写真家もいいけど、僕は本を書きたいんだ」
「なんだぁ、違うのね……」
予想が外れ、少女は所在なさげに写真の中の向日葵を指で撫でる。
しばらくして、「そうだ!」と大きな声を出して少女は立ち上がった。
「あなたの本の絵を描きたいわ。私もっともっと上手に絵を描けるようになるから! どうかな?」
「それは、すごくいいね」
少女は嬉しそうに斜面の下に駆けて行き、大きな向日葵畑の前でくるくると回ってみせた。ヒラヒラとはためく真っ白なワンピースがとても綺麗で、私はまたシャッターを切った。
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