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ずっとずっと彼だけを見ていた。
ずっとずっと彼に見つめられることだけを夢見ていた。
五年間、彼だけを求めていた。
「ねぇ、芳野くん。」
かつて何万回も唱え続けた彼の名前。
「芳野くん、わたし。」
「千佳。」
急に昔に返ったような呼ばれ方をして、彼は目を丸くした。
真っ黒な瞳に、千佳の半泣き顔が映っていた。
「千佳、どうした。」
千佳は込み上げる涙を抑えられず、声を出して泣いた。
「芳野くん、わたし芳野くんが好き。」
好きです、芳野くんが好きなんです。どうしようもないくらい、わたしの中に芳野くんのことしかないのです。
毎夜毎夜、シンと静まり返った部屋で泣いた。枕に顔を押し付け、嗚咽を殺し、苦しい泣き顔を月に向けた。
神様、わたしの願いは芳野くんだけなんです。
芳野くんを思えば生きてこれた。芳野くんを思えば、それ以上の絶望はなかった。
芳野くん、あなたは無関心という刃でこれ以上ないくらいにわたしを傷つけ、わたしを不幸にし、それでもあなたを愛する喜びだけを与え続けてくれました。
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