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寝苦しい夜が続いていた。築30年を越えたコンクリート住宅。熱を吸収しやすく、冷めにくいため、外気温が40度を記録したせいで、冷房が全然効かない。
設定温度を24度まで下げた。電気代は嵩むが、寝苦しさが緩和されるのなら致し方ない。ようやく涼しくなったころには、夜中の2時を過ぎていた。やって来た睡魔に誘われるまま、眠りについた。
普段、私はあまり夢を見る方ではない。年間を通して、両の手で数えられるくらいしか見ない。そのため、夢の内容は ほぼ覚えている。
毎年見る夢もある。魚市場らしき場所に行き、見知らぬオバサマ方に混じって、見たこともない不思議な魚を購入する夢。そして、オバサマ方も私を覚えている。毎年会う度、「久しぶり」と言うのだ。現実世界で彼女たちに会ったことは、一度もない。
夢とは不思議だ。現実世界とは切り離した場所にある。
ずっと、そう思っていた。あの夢を見るまでは──。
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