西さん頑張りましょう。

2/15
前へ
/15ページ
次へ
西さんは今日もせっせとマウスの世話をする。 休日も関係なく世話をする。 自分の都合等お構いなしに、突然やってくるのが合コン話。まあ、自分主催じゃなければ当然の話だが、3日後はちと急すぎる。だが、せっかくの機会を逃すのももったいない。 結局僕は三秒程の沈黙の後に了解した。よろしくと伝えて電話を切る。 相手の女性陣は四十代三人とのこと。こちらのメンツはすぐに浮かんだが、問題は出席できるかどうか。 とりあえず、できそうな順に連絡してみようと、僕は携帯を手に取る。 「あ、角さんこんばんは」 手始めに、元会社の先輩の角田さんに連絡をする。ここは固いはず。 「しょうがないから、行ってやるよ」 もったいぶってとは思うが、ありがたい返答に感謝。 さて次はと。僕は常連の佐藤さんに連絡する。 「佐藤さん、こんばんは。合コンあるけど、どう?」 佐藤さんは残念ながら出張のため欠とのこと。 気を取り直し、次は鷲尾さんに。 「朝早いから、無理」 そっけない。まあ、あなたは不自由してないだろうからいいですよと、若干ひがみ混じりの悪態をつき、電話を切る。 それから三人程断られ、さすがに僕も焦る。 そりゃあ、みんな五十間近の社会人。独身で自由になる金はあっても、それなりの役についてるし、急には無理だよな。でも受けてしまった以上、今さら後には引けない。しょうがない。あんまり気は進まないが。 僕は煙草に火をつけ、一息ついてから電話をする。 「あ、西さんこんばんは。合コンどうですか?」 僕のなかでは、西さんも固いメンツではある。でもそれはある条件をみたした場合だけなので、あまり気は進まなかった。 「行きたいけど、金がない」 予想通りの返答だった。 「僕の知ってるお店だし、そんなにかからないから行きましょうよ。せっかくの出会いのチャンスですよ」 「いや、でも給料前で金ないんだよね」 いつもならここで切るが、今回はメンツが集まりそうにないので、最後の駄目押しをする。 「お金なら気にしないでぜひ。僕が立て替えますから」 西さんはちょっとの沈黙の後に答える。 「それならいいよ。いつも悪いね。返すのはこちら都合だけどいいかな?」 「いつでもいいですよ」 言ってしまった。 そう。西さんの条件とは金である。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加