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さて、どうしたものか。まさか人に会えるとは思っていなかった。いや、あれは本当に人なのだろうか…とても可愛く美しかった。とにかく一度話してみよう。
二度と同じ過ちは犯さんと慎重に滝の裏に回ると洞窟の入り口に背を向けてよりかかった。
「あのーさっきはすいませんでした。あまりにも可愛かったのでつい見とれてしまいました。もしよろしければ話を聞いていただけないでしょうか?」
声は洞窟の中を何回も反響しながら奥へと伝わっていった。
しばらく間をおいて洞窟の奥の方から反響する足音とともにさっきの少女はやってきた。
「どうぞ…」
幼さを含んだ澄んだ声でか細く、しかしはっきりと声でそう言うと手招きで洞窟の中へと案内してくれた。
洞窟の中には滝の流れ落ちる音が響き、涼しい風が吹き込んでいた。天井には明るいライトがついていて大自然の中でも現代だと思い出された。俺は入り口から歩いてすぐの6畳程度の所に招かれマグカップに汲んだ水をもらった。目が覚めてから1時間程度何も飲んでいなかった喉が一気に潤された。彼女は青い紫陽花柄の浴衣に身を包み、同じようにマグカップに水をくみ向かい合うように正座をした。
「泉では本当にすいませんでした」
「いえ、私も人が来るなんて思っていなくて…」
彼女は思い出したかのように顔を赤らめた。
「俺の名前は藤堂 悠生。中学3年生で15歳」
「私は華音。年は19歳」
年上だったのか、と内心驚きつつ年の割に幼いなと感じた。
「この森はどこですか?どうすれば出られます?」
「ここから出たいのですか?でもそれは無理です。どれだけ歩いても同じ景色が続いてて出口なんて見つからない。そのくせこの洞窟にはすぐに戻れるの」
華音さんは少し悲しそうな口調でそう語った。
「華音さんはいつからこの森にいるんですか?食べ物は?心配する人だっているんじゃないですか?」
「心配する人…うん、大丈夫。食べ物はたくさんあるよ!少し探せば木の実はすぐに見つかるし動物もいる」
一瞬表情が曇りうつむいたがそれを隠すかのように今までで一番興奮したトーンで食べ物には困らないことを教えてくれた。
「悠生はあの洞窟を使って。これからはここで一緒に生活しよ」
そういって少し奥に進んだとこで3つに分かれたうちの一番右端を指さした。
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