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「お弁当を持って来たのです。忍ったら、持って出るの忘れちゃったみたいで」
別居しているとは言えないので、嘘を吐いた。しかし守は忍と仲のいい同僚だから、もしかしたら別居の事は聞いているかもしれない。勘ぐったが、守の様子は何も変わらなかった。
「あー、そうなんだ。忍はおっちょこちょいだな」彼が笑った。「相変わらず忍と仲いいねぇー。羨ましいよ。俺も君みたいな嫁さん、早く欲しいなぁー」
「あ・・・・ははは」
乾いた笑いが出た。今の忍との状況は、全く仲がいいとは言えないだろうから。
それに、合コンまたやって相手を探せば、と言う気にもなれない。そもそもこの男が忍を合コンに誘った辺りから、彼の様子がおかしくなったのだ。恨みたい気持ちもあるが、守は関係ない事も解っている。これは、早紀の完全な逆恨みだ。
「その弁当、俺が渡しておこうか? 忍のヤツ、いつ戻るか解んないし」
「本当ですか? ありがとうございます。忙しいのにすみません」
「いいよ。お安い御用」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
早紀は深々と守にお辞儀をして、編集部を去って行った。
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