ACT22.許されぬ想い

5/20
前へ
/509ページ
次へ
  「お弁当を持って来たのです。忍ったら、持って出るの忘れちゃったみたいで」  別居しているとは言えないので、嘘を吐いた。しかし守は忍と仲のいい同僚だから、もしかしたら別居の事は聞いているかもしれない。勘ぐったが、守の様子は何も変わらなかった。 「あー、そうなんだ。忍はおっちょこちょいだな」彼が笑った。「相変わらず忍と仲いいねぇー。羨ましいよ。俺も君みたいな嫁さん、早く欲しいなぁー」 「あ・・・・ははは」  乾いた笑いが出た。今の忍との状況は、全く仲がいいとは言えないだろうから。  それに、合コンまたやって相手を探せば、と言う気にもなれない。そもそもこの男が忍を合コンに誘った辺りから、彼の様子がおかしくなったのだ。恨みたい気持ちもあるが、守は関係ない事も解っている。これは、早紀の完全な逆恨みだ。 「その弁当、俺が渡しておこうか? 忍のヤツ、いつ戻るか解んないし」 「本当ですか? ありがとうございます。忙しいのにすみません」 「いいよ。お安い御用」 「ありがとうございます。よろしくお願いします」  早紀は深々と守にお辞儀をして、編集部を去って行った。
/509ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4107人が本棚に入れています
本棚に追加