ACT22.許されぬ想い

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  「本当、何にも気づいていないんだな、忍の嫁さん」  彼女が編集部を出て行ったのを見届けると、唇の端だけを持ち上げ、守が目を細めて笑った。早紀から預かった弁当は、編集部の共有スペースに乱雑に置いてある大きめの紙袋のひとつに投げ入れ、そのまま大堂出版の入っているビルのゴミステーションの大型ごみ捨て用トランクに放り投げた。  勿論、誰にも見られないように、細心の注意を払って。 「バカで鈍感な嫁持つと、苦労するねぇ。忍には同情するよ。けど、それでこそ面白い。さあ、夫婦でどう動くかなぁ。楽しみだ」  ははっ、と小さく笑って、守がその場を去って行った。
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