4106人が本棚に入れています
本棚に追加
忍に、太陽が自宅へやって来ることは断っておいた方がいいかと悩んだ。
しかし何と言って伝えるのだ。
結婚記念日用に作った料理が、忍が帰って来なくてダメになりそうだから太陽が食べにくる――そんな風に忍に言うつもりなのか?
結果、忍には言えなかった。また、夫に言えない秘密がひとつ増えてしまった。
太陽が絡むとロクな事にならない。忍への秘密が増えてしまうだけだ、と早紀はため息を吐いた。
しかし、自分が不安定で壊れそうな所を、太陽には何度も救ってもらった。その恩返しにステーキを振舞うだけだ、ただそれだけの事、と自分に言い聞かせた。それに、こんな事をわざわざ忍に報告する必要は無い。彼もいい気はしないだろう。
仕方なく、早紀は太陽にLineでメッセージを入れ、連絡した。
――お疲れ様。今日の夕飯の事だけど、ホントに家に食べに来るの?
明日は、太陽がクライアントと打ち合わせがあるらしいと聞いている。願わくば残業になって、帰宅時間がずれてくれないか、と願った。
そうしたら、ステーキ弁当を明日作って持ってくる、というので手を打ってもらおうと思ったのだ。
――当たり前だろ。ステーキ食べる為に仕事を片付けたからな。もう社ビル前で待ってるぞ。
太陽からLineメッセージが速攻で返ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!