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満員の地下鉄に揺られ、最寄り駅の根津駅で降りた。駅を背に北へ徒歩十分ほどの距離にあるマンションが、早紀と忍の自宅だ。
一階部分にはアイボリーの岩のようなタイル、二階以上はグレーのタイル地に今時の洒落た内装をしている。十階建てのそこそこの大きさのマンションだ。
「この六〇二号室よ」
大人が六人乗れば定員の小さなエレベーターに二人で乗り込み、自宅まで案内した。きちんと整頓された室内に足を踏み入れた太陽は、早紀の家らしいな、と思った。所々に旦那の影が見えるのが、彼の胸中をモヤモヤさせた。
早紀が独身だったら、と何度考えただろう。
受け入れてくれるなら、精一杯の愛をその身体中に刻み付けて一生大切にしたいと、何度願っただろう。
好きだと、伝えたい。
許されぬこの想いを、お前に――
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