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彼女は、夫を一途に想っている。
どんなに自分が彼女を想っても決して報われないし、彼女がこちらを振り向いてくれるとは思えない。
だが、忍が早紀を本当に裏切っていたら――その時は、容赦しない。
忍から彼女を奪ってやる、と。
「そろそろステーキ焼けるよ。あ、飲み物はビールでいい?」振り返った早紀が声をかけてきた。
「何でもいい。それよりこのままじゃ窮屈だから、楽にさせてもらうな」
言うが早いか、堅苦しかったのでネクタイを緩め、ワイシャツの前ボタンを二つほど外した。胸元をはだけさせた太陽は、そのまま鋭い目線で早紀を見つめた。
「あぁ、早く食べたいな」
早紀には、まるで自分に向けられた台詞の様に聞こえた。それを意識した瞬間、ドキン、と心臓が音を立てて鳴った。
あまりに鋭い視線に、吸い寄せられそうになった。
はだけた首元から、危険な男の色香を放つ太陽に、心が動かされた。
――早く食べたいな、って、一体何を?
とてつもなく危険な色気のある太陽に、そのまま唇を奪われて、押し倒されるかと思った。
恐ろしい事に、ほんの少しだけそれを期待している自分がいた。心臓がやけにうるさく、鼓膜に響く。
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