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胸中の想いを吹き飛ばすように、早紀は明るい大きな声で言った。
「アツアツのステーキよ。さ、食べて食べて!」
料理好きの早紀は、家にステーキを焼ける専用の鉄板を持っていた。ファミリーレストラン等でよく使われている、一人前の小さな鉄板だ。それにステーキ肉を乗せ、グリルに投入していたものが焼きあがったので、自分で作ったソースをかけて太陽の目の前に置いた。
ジュワーっと食欲をそそる音が響く。鉄板の上でソースがピチピチと音を立てている。
「おおー、美味そうだ」
「太陽、ガーリックライス好き? さっき作ったの。白いご飯が良かったら、そっちもあるよ」
テーブルには日曜日に沢山作った手付かずだったおばんざいを並べ、焼きあがったステーキの横に、先程拵えたガーリックライスを置いた。
「うん。何でも食うからそれでいい。それにしても美味そうだ。もう食べていい?」
「いいよ。乾杯しよ。はい、ビール」
「サンキュ」
グラスになみなみとビールをつぎ、チン、と音を立てて乾杯した。太陽はビールを一気に煽り、早速中身を空にした。
ステーキを頬張り、あー、うまい、を連呼して、太陽が嬉しそうに食事を進めていく。
彼の笑顔に再び心を動かされるといけないので、あまり太陽の方は見ないようにして、早紀自身もステーキを一口食べた。
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