ACT03.悪い女

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  「じゃ、約束。俺にご奉仕してあげる、って可愛く言ってみて?」 「あ、明日は・・・・」早紀は真っ赤になりながら、忍を見つめて言った。「ご・・・・ご主人様に、いっぱい・・・・ご奉仕してあげるね」 「良くできました。俺も明日、早紀にいっぱいご褒美あげるよ――・・・・」  忍と早紀の玄関先での会話をそこまで聞いた所で、奈々はワイヤレスヘッドフォンを掴んでベッドの上に投げ捨てた。  今彼女が聞いていたのは、早紀の自宅に仕掛けた盗聴器の音声だ。盗聴器は玄関、寝室、リビング三か所に仕掛けてある。大抵の音声はこれで拾えた。  彼等の会話は、あまりにバカ夫婦丸出しで、聞くに堪えなくなった。反吐(へど)が出そうだ。  何が世界一可愛い、だ。あんな男女(おとこおんな)が世界一可愛い訳が無い。忍の頭はどうかしている。早紀に、何か弱みでも握られているのではないか。それとも、視力が極端に悪いのか、はたまた男か女か解らないようなものが好きなゲテモノ専か――彼等の甘い会話を思い出し、奈々はイライラした。
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