ACT04.ひねくれ者

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 忍が合コンに駆り出される当日となった。早紀は太陽のせいで残業が決定している。どちらも午前様にならないように帰る約束をして、夫婦揃って出社した。  また、昨日の奈々の相談も忍にきちんと話した。奈々が取引先の社長に言い寄られて困っているから、奈々のカレシのフリをしてくれないか、と。  忍はあっさりオーケーしてくれた。たかが数十分か長くても一時間程度だろう、構わないよ、早紀ちゃんの大事な親友が困っているなら協力するから、と優しく言ってくれた。来週ならいつでも都合をつけるから、できるだけ昼間にしてくれ、早紀ちゃんが心配するから夜はやめてくれ、という伝言も授かった。  奈々と忍の事を少しでも邪な考えで疑ったりするなんて、何てバカだったんだろう、と早紀は反省した。  忍と結婚する時は誰よりも奈々が祝福してくれて、そんな大事な友達の奈々が困っているのに、自分の小さな嫉妬心で二人を疑ってしまうなんて。  もっと忍の事を信用して、というよりも忍に愛されているという自信を持って、奈々のピンチを救ってもらおう。  早紀は忍と別れて、そのまま自分のデスクには向かわず、奈々の居る営業課の方に向かった。  奈々はまだ来てなかったので、忍が例の件についてオーケーした事、来週の昼間なら何時でも良い事、達筆で綺麗な字でメモを書き、それを残して去った。  スマートフォンで連絡がすぐ取れないのは不便に思うが、仕方ない。
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