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制作課に入り、早紀はまたも自分のデスクにはすぐ向かわず、今度は太陽のデスクに向かった。太陽は既に出社していて、煙草をふかしながら頭をバリバリ掻き、パソコンの画面を睨みつけて作業していた。
恐ろしく機嫌が悪いのは明確だった。近寄りたくなかったが、自分の退社時間がかかっている。今日は忍にメイドで奉仕する約束をしているのだ。お仕置きは恥ずかしいが、忍に乱されたい。
校閲や修正をモタモタして、帰りが午前様になったら大変だ。出来上がっている原稿だけでも時間のある内にチェックしておこうと思ったのだ。
「おはよ、太陽。朝からご苦労様」
機嫌が悪いのは予想していたので、缶コーヒーで少しでも太陽の機嫌を緩和しようと思って持参した。風当たりがきついのは、仕事をする上でもあまり好ましくない。
太陽は珈琲好きで特にブラックを好んで飲むから、有名な珈琲メーカーの挽きたてブラックと大きく缶にペイントされたものを買っておいたのだ。
「疲れたでしょ? これ、飲んでよ」
「ああ」
画面に顔を向けたまま、こちらを見向きもせずに手だけ差し出された。これで渡した珈琲の缶に微糖とかミルク入りとか書かれていようものなら、彼は激怒するだろう。以前知らずに普通の微糖珈琲を渡したら、砂糖入りなんて珈琲じゃない、邪道だ、等と散々文句を言われたのだ。あれは最悪だった。
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