ACT01.幸せなセックス

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  「ああ、うん。刑部太陽(おさかべたいよう)ね。そうそう。最近雑誌の企画でチーム組むことになったから、仕事を一緒にする機会がグンと増えたの。それにしても太陽、合コンがあるなんて言ってたかなぁ」  刑部太陽は早紀と同じ制作部に所属している、彼女より一つ年上の、三十歳の男性だ。  深く刈り上げたソフトモヒカンが特徴で、早紀が見上げなければいけない程の長身の男は、そうそういない。身長も百九十センチあり、目力が強くワイルド系のイケメンだが、見た目から読み取れるようなキツい性格だ。それだけではなく、口も悪い。  何かにつけて絡まれて、からかわれて、イジられるのだ。  気に入られているのだろうというのは解るが、口が悪いからカチンと来ることが多い。言いたい事も遠慮なく言うし、イケメンなのに女の影が無いのは、キツい口調の物言いが原因だろうと推測している。 「その彼が、おひとり様にピリオド打ちたいからって自分で企画したくせに、仕事が入ったんだってさ。不運だよね。だから、同じ編集部で張り切って準備している婚活野郎に頼み込まれて、俺が急遽数合わせに参加することになっちゃって」  苦笑交じりに忍が、合コンに参加しなくてはならない経緯を語った。  昨日奈々が営業で取って来た大口の仕事が、恐らく制作のデザイン部署へ回ったのだ。  その大口広告の雑誌掲載の締め切りが間際だから、デザイン部総出は必須。太陽もその内の一人という事だ。
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