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「あ、太陽? 早速原稿三つチェック終わったから、補正も含めてデータ返しておいたよ。White1とRed1の広告、あれ、太陽がデザインしたんでしょ? 流石、ホントに素敵だね! 残りのチェックも仕事の合間見てやっておくから」
『ああ、助かる』
彼はそれだけ言うと、ガチャ、と受話器を置いたので内線が切れた。余計な会話をしている暇は無いらしい。
乱暴に受話器を置いた太陽は、椅子に凭れて目を閉じて目頭を揉んだ。突然の大口広告契約が舞い込んできたものだから、一昨日から色々な作業に追われ、大変疲れが溜まっている。
しかし今の一言で気分が軽くなり、やる気が湧いてきた。嬉しくて、思わず口角が上がった。我ながら現金だと思う。
――あれ、太陽がデザインしたんでしょ? 流石、ホントに素敵だね!
先程の早紀の言葉が蘇った。
綺麗なのは当然だ。
White1のデータの女性は、早紀をイメージして作ったものだから。
彼女が目を閉じて手を伸ばしたら、きっとこんな風に絵になると思ってデザインしたのだ。
「・・・・どうして、結婚してんだよ・・・・」思わず呟いてしまった。
早紀の事を考えるとイライラして、さっき吸ったばかりだというのに再び煙草に火をつけた。苦しいくらいに息を吸い込んで、深く長いため息を吐くように息を吐き出した。
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