ACT04.ひねくれ者

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 太陽は、全く自分の容姿に似合っていない爽やかな自分の名前が嫌いだった。  どんな爽やかなヤツかと思ったら、あんな恐ろしい巨人かよ――みたいな事を、どれだけ陰で言われてきただろう。どうせだったら、太陽じゃなくて大志とか大河とか、もっと自分に似合った爽やかじゃない名前を付けてくれたら良かったのに――親を恨めしく何度も思った。強面の為、ケンカを吹っ掛けられたり陰口を叩かれることが多く、余計ひねくれた性格になってしまった。  初めてだった。自分を怖がらず、笑顔を向けてくれた女性。  彼女に心を奪われた次の瞬間、失恋した。早紀の左薬指に輝く結婚指輪を見て、打ちのめされたのだ。  しかし、どうしても心から早紀を追い出す事が出来ずに、既婚者と知りながらも、太陽は随分長い間彼女に片想いをしている。  チームを組むための根回しまで水面下でやった。仕事をキッチリとこなす人間と組ませてもらえないなら、他社(よそ)へ行くとまで上に告げたのだ。勿論、会社を辞めるつもりは無いが、こう言えば早紀と組めると思って強硬手段に出たのだ。  功を奏して最近チームを組むようになってからは、何かにつけて早紀に絡んで憎まれ口を叩いてばかりだが、それはひねくれた彼の愛情表現なのだ。彼女が、好きだから。  そんな太陽は、獰猛(どうもう)に二人の僅かな綻びを、隙を、常に探し狙っている。  見つけたらすぐ喰らいついて、何時でも忍から早紀を奪えるように――  
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