ACT05.合コン

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 今日の合コンは太陽が企画したと聞いていたが、守のゴリ押し頼みだったことが後から聞いて判明した。おひとり様同士ピリオドを打とう、みたいな話になり、守が気の乗らない太陽に無理矢理頼み込んだらしい。太陽は制作部でデザイン担当をしているから、取引や諸々の仕事を引き受ける為、他社とも関りが多く顔が広い。別の会社の人間も多く知っているとの事で、守がしつこく頼んで今日この企画が実現することになったという訳だ。  時計を見ると、午後七時二十分だった。会社帰りを考慮して、中途半端だが七時半から開始する事にしたようだ。  太陽が来れないので、進行役は恐らく守になるだろう。しかし、その肝心の男が来ていないとなると、どうやって始めればよいのだろう。個室内には沈黙が流れている。ここは自分から話を切り出した方が良いのだろうか。しかし、そういう事は得意ではない。  早紀なら上手くこの場をまとめ、皆が楽しく飲める明るい雰囲気に持って行ってくれるのに、と自分の妻を思い出した。このような場で彼女に気に止めてもらった事が、忍が早紀を意識するきっかとなったのだ。  忍と早紀が出会ったのは、社内親睦会だった。もう四年くらい前になるのだろうか。地味で大人しい忍はこの様な親睦会は正直言うと苦手だった。自分から話をするのが得意では無かったからだ。きっかけがあれば話は出来るが、内向的な性格なので常に受け身だった。  それを苦とも思わなかったし、大人しい人間と位置づけされていれば、会社での人間関係も当たり障りのないものだった。地味な忍はそれに満足していた。
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