ACT05.合コン

4/13
前へ
/509ページ
次へ
  ――折角ですから、一人で飲まずにあちらで一緒に飲みませんか?  隅の方で黙ってビールを傾けていた自分に声を掛けてくれたのが、早紀だった。  何度か見かけたことがあるが、背が高い綺麗な女性だと思っていたが、部署が違うので今までは関わることが無かった。  さりげなく輪に入れてくれて、楽しく話をすることが出来た。気配りのできる彼女のお陰で、自分の部署の人間とも打ち解けて親しくなれたし、それがきっかけで彼女が気になりだした。  気さくで明るい彼女は、社内で人気者だった。彼女の周りには、男女関わらず常に人が居た。  自分はその中に入ることが出来ないから、わざと早紀が来る時間を見計らって出社し、すれ違い様に挨拶するだけで満足した。もう少し先の進展を望み、勇気を振り絞って飲みに誘ったら、いいですよ、と笑ってくれたのだ。  連絡先を交換して、舞い上がった。その日は仕事が身に付かなかった。預かった大切な原稿を、打ち合わせの為に立ち寄った喫茶店にうっかり忘れて来そうになった程、早紀の事を考えるようになってしまった。  他愛の無いメールやLineのやり取りにでも、心を躍らせた。  
/509ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4045人が本棚に入れています
本棚に追加