ACT05.合コン

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 早紀を好きになってから、地味で内向的だった忍は変わった。彼女に釣り合うようになりたくて、振り向いて欲しくて、地味な男からできるだけお洒落な男になる努力をした。  その頃から、何故かモテるようになった。今まで誰からも見向きされなかったのに、女性から声を掛けられて誘われたり、告白されることが増えた。何時だったか、社内一の美人と言われる九条奈々にまで告白された事もあった。早紀が好きだったから、彼女には丁寧につき合えない旨伝えて断った。昔の話だ。  それから早紀とは何の進展もせぬまま、時間だけが過ぎた。  彼氏はいるのと聞くまでに、どれだけ胃を痛めて苦労しただろう。あれだけ魅力的な女性なら、彼氏の一人や二人居るに違いないと勝手に想像していたから、聞くに聞けなかったのだ。  でも、他の男に見る目がない事を、感謝することになった。  彼女を飲みに誘う回数が増えたある日の事だ。早紀は忍に大分打ち解け、色々話をしてくれるようになった。  彼女が悩みをぼやいた時の事だった。彼女は長身のコンプレックスを抱えていて、常に男前とか、カッコイイと言われることを非常に気にしていて、誰からも女扱いされない、と嘆いたのだ。  今しかない、と思った。自然に聞き出すチャンスだとも思った。  キリリと痛む胃を押さえながら、忍は意を決して聞いたのだ。彼氏はいるのか、と。
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