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「ずっと寂しかったの。付き合ってるのに誰にも内緒で、二人きりにもなれなくて。私ばっかり好きになって。でも、もういい。別れたかったんでしょう?だからっ」
別れてあげる、という言葉を彼の腕の中に包まれた私は吐き出すことができなかった。
「バカ。別れたいとかそんな訳あるかよ。お前、俺が今までどんだけ我慢したか知ってんの?」
我慢って……。
意味が分からない。
「俺がお前と付き合ってるなんて聞いたら藤木先輩がバスケに集中できなかっただろ?引退してからだってギリギリまで部活一本だったから、受験勉強だってみんなに遅れ取ってるし。だから集中させてやろうと思って、先輩が大学受かるまでは公言しないって思ってたのに」
確かに心配性の兄なら私が誰かと付き合う事になれば心配事は尽きないかもしれない。
だからって……。
彼の言葉を素直に聞き入れられない。
「私達の関係は誰にも秘密って言われて……私ずっと不安だったし負い目しかなかった」
「何だよ負い目って」
彼の声が尖る。
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