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驚いた。
あの、いつもぼうっとしている兄を好きになってくれる人がいるのも。
いつもクールな彼が、こんなに照れているのも。
人に気付かれるほど彼が私を好きというのも。
掌で目元を隠しながらも彼は言葉を続けた。
「他の女子には触らないのに、亜希には頭撫でてる事多いって言われて。俺が亜希の事好きなのバレバレだって。それでからかわれて」
そうだったのか。
確かに、頭を撫でてくれる事は多かった。
それがとても嬉しかった。
でも、そんなの他の子にもしていると思っていた。
私だけ……。
自分の頭にそっと触れる。
「だから亜希より俺の方が好きが強いから安心しろ。せっかくの誕生日に泣くな。ほら、これやるから……」
濡れた睫毛を彼の親指が拭う。
ポケットから出された小さな紙袋。
受け取るとシャラリと微かな音が鳴った。
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