君の問ふまで

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「ま、まさか。そんなんじゃ……」 そう言って、失敗した。 彼の目を、見てしまったのだ。 ないから、と続けて発した否定の言葉はもう涙声が混じっていた。 「図星だろ」 「違う」 「じゃあ何で泣くんだよ」 「泣いてない」 「でも、これから泣くだろ?」 「泣かない」 「泣くって。泣き虫だろお前」 「しつこいな、泣かないって言ってるでしょう!」 と言った時にはもう熱を帯びた液体が頬に筋を作っていた。 「ほら、な?」 勝ち誇ったように笑みながら彼が私の頬に手を伸ばそうとして、私は慌てて後ずさった。 「何?振られた?だったら俺が慰めてやろうか?」
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