君の問ふまで

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……悔しかった。 彼の、その優勢な場所から私を見る笑みが。 だから、ただギャフンと言わせたかった。 そして間抜けな私は、事もあろうかその売り言葉を買ってしまったのだ。 「そうよ、悪い?私だって叶わない恋に、マネージャーの仕事手に付かないくらいに悩んでんのよ!」 ーー俺が慰めてやろうか?ーー どうせ、冷やかしだったのだろう。 そんなつもりも無いくせに……。 悔しさは抑えがきかずに溢れ出た。 「慰める?だったら今すぐ慰めて……」 みてよっ、という捨て言葉を吐いた時には既に彼の腕の中だった。 「悪い。言い過ぎた。……慰めてやるから、許せ」 そのキスは、彼も初めてだったのだろう。 今思い出すだけでも恥ずかしくて、愛おしい。 とてもぎこちない、キスだった。 根は真面目なのだ。 ちゃんと責任は取る、と言って付き合う事になってしまったのは、私にとって幸か不幸か。 あの時はまだ知らなかった。 ただ、どんな方法でも彼と付き合える事になったのが嬉しかった。 『ただし、藤木先輩にバレたら困るから俺達の関係は誰にも内緒な』 彼の言葉に引っ掛かりを持ちながらも。 藤木先輩とは私の兄だ。 確かに先輩の妹と付き合うとは公にしにくい。 その言葉を律儀に守り、部活で顔を合わせても皆と同じ対応を取った。 廊下ですれ違ってもただの部員とマネージャー。 それ以外の関係と悟られないように。 部活の休みは殆どなく、クリスマスだって関係なかった。 唯一の休みだった三が日だって互いに親戚の家に行っていたからデートするわけでもなくあっという間に過ぎ去った。
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