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部活が終わって自宅に帰る為にバスに乗る。
彼は自転車通学だったから、一緒に帰るなど激しい雨の時だけ。
それだって、他の部員も一緒であったから二人きりになどなれなかった。
この座席の隣に並ぶ事など一度も無かった。
スマートフォンを鞄から取り出していつものアプリを開く。
無料通信アプリでのメッセージのやりとり。
日に一言二言言葉を交わし、最後はおやすみなさいの挨拶。
たったそれだけだったけれど、それが唯一、私達を恋人のように思わせてくれていた。
彼がそう思っていたかは分からないけれど。
昨日の会話を指でなぞる。
『今日は星が綺麗だね』
『W見っけ』
『私も見つけた』
互いの家から同じ空を見る。
たったその事だけで、泣きたい程嬉しかった。
その関係も、明日で終わる。
今まで、ごめんね。無理矢理付き合わせて。
明日、ちゃんと頑張るから。
勇気を頂戴。
バスの窓から星を探す。
儚い光の小さな星に願った。
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