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いつもの時間ならもう誰か彼かが来ていて、声と音とが響いている。
だけど今は二人、しんと寂しげに静まり返った体育館に立つ。
私の知らない体育館に居心地が悪い。
掴まれた腕は漸く解放されて、私は胸元でその圧迫感を元に戻そうとそっと撫でた。
「あの、何?どうかした?」
「お前、なんか最近変だぞ。どうした?」
「え?」
「なんか心ここに在らずって感じの時が多い。何か悩みでもあるのか?」
『何か悩みでもあるのか?』
一年前のあの日と重なる。
あの時も今も、変わらぬ恋の悩み。
「ううん。別に悩んでない。大丈夫」
顔は笑いながらも、心がチリチリと痛みを伝える。
「大した事じゃ無いから。用事それだけならもう、私帰るね」
じゃあね、と彼の横をすれ違おうとして再び腕を掴まれた。
「おい待てって。他の奴らにはそれでもいいけど、俺にまで隠すな。最近溜め息ばっかだぞ。何があった?これでも亜希の彼氏なんだからな。相談にのってやるから何悩んでんのか白状しろ」
ーー亜希の彼氏ーー
少しはそんな風に思ってくれていたのか。
小さな笑みが漏れた。
もう十分。
それだけで、ちゃんと報われた。
だから……昨日の星達、勇気を頂戴。
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