第一章 十世界の聖剣を手に入れた少女

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第一章 十世界の聖剣を手に入れた少女

第一話 エリオ、魔物を屠る  魔界。ブレーガダ渓谷―― 「プロメテウス。これは一体どういう状況?」  エリオは眉をひそめ、右手の中指にはめた指輪に向かって問いかけた。 「恐らく魔物の集落かどこかに飛んできたんだろうな。ったく。毎度毎度、お前の世界転移魔法(ムンディウム)は雑すぎて感動するぜ」 「うるさいわね。仕方ないでしょ、飛ぶ前には転移先の状況なんてわからないんだから」  フンと鼻を鳴らし、エリオは頬を膨らませた。 「にしても、この数はすげえな」 「……そうね」  ため息交じりに、エリオはぐるりと辺りを見回した。  魔物。魔物。魔物。三百六十度、異形の怪物たちが彼女を取り囲んでいる。  百……二百……いや、三百はいるわね……。  エリオが様子を窺っていると、魔物の群れの中から、一匹の魔物が前に出てきた。  人の体に牛の頭部。手には巨大な斧。ミノタウロスである。   「何者だ、小娘」  低く、籠った声が響く。  正面に立ち、相対する両者。ミノタウロスの身長は、ゆうにエリオの倍はあった。  小柄なエリオは、相手を不機嫌そうに見上げると、長い白銀の髪を掻き分け、短いため息を吐いた。 「見下さないでもらえる? 不愉快なの」     
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