10人が本棚に入れています
本棚に追加
第一章 十世界の聖剣を手に入れた少女
第一話 エリオ、魔物を屠る
魔界。ブレーガダ渓谷――
「プロメテウス。これは一体どういう状況?」
エリオは眉をひそめ、右手の中指にはめた指輪に向かって問いかけた。
「恐らく魔物の集落かどこかに飛んできたんだろうな。ったく。毎度毎度、お前の世界転移魔法は雑すぎて感動するぜ」
「うるさいわね。仕方ないでしょ、飛ぶ前には転移先の状況なんてわからないんだから」
フンと鼻を鳴らし、エリオは頬を膨らませた。
「にしても、この数はすげえな」
「……そうね」
ため息交じりに、エリオはぐるりと辺りを見回した。
魔物。魔物。魔物。三百六十度、異形の怪物たちが彼女を取り囲んでいる。
百……二百……いや、三百はいるわね……。
エリオが様子を窺っていると、魔物の群れの中から、一匹の魔物が前に出てきた。
人の体に牛の頭部。手には巨大な斧。ミノタウロスである。
「何者だ、小娘」
低く、籠った声が響く。
正面に立ち、相対する両者。ミノタウロスの身長は、ゆうにエリオの倍はあった。
小柄なエリオは、相手を不機嫌そうに見上げると、長い白銀の髪を掻き分け、短いため息を吐いた。
「見下さないでもらえる? 不愉快なの」
最初のコメントを投稿しよう!