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このスピード。速度強化の類いではないわね……。人間に出せる速さじゃない。となれば、考えられる可能性は――物質変換かしら?
「正解だ、エリオ。その姉ちゃんは、魔法で物質を――自分自身を光に変換してやがる」
エリオの思考を読み取ったプロメテウスが答える。
やっぱり光……か。どうりで速いわけね。でも――
ふいに、エリオは光速で移動するリリスの目を見据えた。
「――ッ!?」
後方に飛び、リリスは大きく距離を取った。
ねっとりとした脂汗が全身から溢れ出る。
強く、速く、鳴り止まない耳鳴りのように、鼓動が脈打つ。
それほどに、彼女は動揺していた。
「どうしたの? 私と目が合ったことがそんなに不思議?」
「くっ……」
図星であった。
そして、それはリリスにとって初めての経験。
プロメテウスの言った通り、彼女の魔法は光属性の物質変換。自分とそれに付属する物質を、光そのものにすることで光速移動を可能とする。
比喩ではない。
字の如く、リリスの速さは光のそれと同じ。
この世界の速度表記にして、秒速約三十万キロメトラ。
だからこそ、そのリリスと目が合う・・・・など、ありえないのだ。
「偶然だ! 光の速度を目で追えるわけがない!」
「馬鹿ね。追えるのよ、私には」
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