第一章 十世界の聖剣を手に入れた少女

2/45
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
 エリオは自分より背の高い相手が嫌いだった。 「あと、口を閉じてちょうだい。臭くて吐きそうだわ」 「ハッ……口の聞き方を知らぬようだな!」  ミノタウロスは手に持った斧の刃を、エリオの細い首筋に添えた。 「どうやってこの魔界まで来たのかは知らぬが、我等を侮辱するということは、魔王様を侮辱することと同義。死をもって償ってもらうぞ」 「へえ。魔界に、魔王様……ね」  わかりやすいテンプレ世界だこと。魔王様とやらがいるのなら、すぐにあれ(・・)が見つかるかも知れないわね。好都合だわ。 「……何を笑っている。恐怖で気でも触れたか?」  ミノタウロスがそう言うと、周りの魔物がニヤニヤと笑いだした。  エリオはすぐに察した。絶対的強者の笑み。この世界では、魔物が人間よりも上位の存在である、と。 「馬鹿ね」 「何……?」 「恐怖っていうのは、弱者が強者から抱く感情でしょ。私が感じるわけないじゃない」  ミノタウロスの顔が怒りでひきつる。次の瞬間、声を荒げ、斧を振り翳した。 「小娘がっ! 死んで己の行為を悔いるがいい!」 「……本当に、馬鹿ね」  小さくため息を吐き、エリオは左手に力を込めた。 「来なさい。弐の聖剣ジークフリート」     
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!