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エリオは自分より背の高い相手が嫌いだった。
「あと、口を閉じてちょうだい。臭くて吐きそうだわ」
「ハッ……口の聞き方を知らぬようだな!」
ミノタウロスは手に持った斧の刃を、エリオの細い首筋に添えた。
「どうやってこの魔界まで来たのかは知らぬが、我等を侮辱するということは、魔王様を侮辱することと同義。死をもって償ってもらうぞ」
「へえ。魔界に、魔王様……ね」
わかりやすいテンプレ世界だこと。魔王様とやらがいるのなら、すぐにあれが見つかるかも知れないわね。好都合だわ。
「……何を笑っている。恐怖で気でも触れたか?」
ミノタウロスがそう言うと、周りの魔物がニヤニヤと笑いだした。
エリオはすぐに察した。絶対的強者の笑み。この世界では、魔物が人間よりも上位の存在である、と。
「馬鹿ね」
「何……?」
「恐怖っていうのは、弱者が強者から抱く感情でしょ。私が感じるわけないじゃない」
ミノタウロスの顔が怒りでひきつる。次の瞬間、声を荒げ、斧を振り翳した。
「小娘がっ! 死んで己の行為を悔いるがいい!」
「……本当に、馬鹿ね」
小さくため息を吐き、エリオは左手に力を込めた。
「来なさい。弐の聖剣ジークフリート」
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