10人が本棚に入れています
本棚に追加
あまりに率直なその回答に、エリオはキョトンとした顔をした。
「あら、意外と素直ね。勇者が恐いなんて――」
「――でも、ウチは逃げないよ。勇者は恐怖しないんじゃない。恐怖に打ち勝てるから、勇者なんだ!」
歯を食いしばり、足を広げて構えなおすリリス。
その目は、真っ直ぐエリオを見据えていた。
絶対に諦めない――そう言っているようだった。
「……全く。面倒なことこの上ないわね」
眉間に皺をよせ、顔をしかめるエリオ。
倒すのは容易いわ。でも、こいつに必要なのは圧倒的敗北。相手が不滅でも、光の速度を捉えられても諦めない。それ以上の絶望を与えるには、やっぱりあれかしらね――
「おい、まさか神撃の聖剣を使うつもりか? 死ぬぞ、あいつ」
「大丈夫。死なないわよ」
言って、エリオは右手を天に向かって掲げた。
「滅ぼしなさい。玖の聖剣ゼウス」
エリオが名を呼ぶと、空が明るくなった。
異変に気付いたリリスが天を仰ぐ。
空よりも遥か上の宙から、何かが降ってくるとリリスは直感した。
「魔法……?」
しかし、リリスは逃げず、笑みを浮かべてエリオを見据えた。
最初のコメントを投稿しよう!