第一章 十世界の聖剣を手に入れた少女

26/45
前へ
/45ページ
次へ
 本来、全身火傷、全身麻痺でまともに動けるはずはなかったが、リリスは自身の身体を人間と光の中間に保つことによって、無理矢理行動を可能にした。  よしっ。これで戦局は──逆転した!  勝利を確信するリリス。  しかし、同時に奇妙な違和感も覚えていた。  追い詰めたはずの少女に、焦る様子が見当たらないのだ。既に不滅ではない。にも拘らず、相も変わらず涼しい顔のままである。  リリスは眉をひそめ、エクスカリバーを握る手に力を込めた。 「素直になったらどう? 余裕ぶっても、強がりにしか見えないよ」 「馬鹿ね。強がりって言うのは劣勢のときにでるものよ。私から出ることは無いわ」 「それを強がりとを言うんだよ!」  リリスが叫んだその刹那、目を疑うような出来事が起こった。  突然、目の前からエリオの姿が消えたのである。  嘘っ!? 一体どこへ!?  刹那、リリスの背筋に悪寒が走る。  背中に尖った何かが当てられていた。見なくても、リリスにはそれが鎧の隙間に差し込まれた刃物だと、感触だけで理解できた。  間違い……ない。背後にいるのはあの子だ。いや、でもそんなことよりこれは──嘘だ、ありえない!  リリスはもう一つの重大な異変に気がついた。自覚した途端、その表情に恐怖の色が浮かぶ。カタカタと震えながら、錆びたブリキの玩具おもちゃのように、ゆっくりと振り返った。     
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加