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本来、全身火傷、全身麻痺でまともに動けるはずはなかったが、リリスは自身の身体を人間と光の中間に保つことによって、無理矢理行動を可能にした。
よしっ。これで戦局は──逆転した!
勝利を確信するリリス。
しかし、同時に奇妙な違和感も覚えていた。
追い詰めたはずの少女に、焦る様子が見当たらないのだ。既に不滅ではない。にも拘らず、相も変わらず涼しい顔のままである。
リリスは眉をひそめ、エクスカリバーを握る手に力を込めた。
「素直になったらどう? 余裕ぶっても、強がりにしか見えないよ」
「馬鹿ね。強がりって言うのは劣勢のときにでるものよ。私から出ることは無いわ」
「それを強がりとを言うんだよ!」
リリスが叫んだその刹那、目を疑うような出来事が起こった。
突然、目の前からエリオの姿が消えたのである。
嘘っ!? 一体どこへ!?
刹那、リリスの背筋に悪寒が走る。
背中に尖った何かが当てられていた。見なくても、リリスにはそれが鎧の隙間に差し込まれた刃物だと、感触だけで理解できた。
間違い……ない。背後にいるのはあの子だ。いや、でもそんなことよりこれは──嘘だ、ありえない!
リリスはもう一つの重大な異変に気がついた。自覚した途端、その表情に恐怖の色が浮かぶ。カタカタと震えながら、錆びたブリキの玩具おもちゃのように、ゆっくりと振り返った。
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