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不死身の身体。科学という名の異能の力。そして、極めつけに時間停止である。さすがのリリスも言葉にならなかった。どれもこれも、彼女にとって常軌を逸していた。
「お前、リリスとか言ったか。確かにお前はそこそこ強い。だが、光になれるぐらいの力じゃ、聖剣使いの足元にも及ばねぇよ。魔王討伐はあきらめろ!」
少女の指にはめられた、知識の聖剣の言葉がリリスの胸に突き刺さる。リリスは何かを言いかけて、口にするのを止めた。心の底から、その通りだと思ってしまったからだ。
今まで、勝てない敵なんかいないと思ってた。魔王ですらも、絶対に倒せると信じて疑ったことはなかった。だけど、これはあまりにも――
全身から力が抜けていき、リリスはその場に座り込んでしまった。
その様子を見るなり、エリオは溜息を吐き、エクスカリバーを放り捨てた。
「さすがに理解できたみたいね。これに懲りたらもう魔王のことは──」
「ねえ。世界は必然でできているって言ったよね?」
視線も定まらないまま、リリスはエリオの言葉を遮って言った。
「……ええ、言ったわ」
「俺はあんまり信じちゃいないがな。確率論を無視するのは、演算装置である俺には難しい」
「……それって、誰もかれも当てはまる話なの?」
こぼれた疑問に、エリオは一瞬目を丸くさせたが、一呼吸おいて笑みを浮かべた。
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