10人が本棚に入れています
本棚に追加
「失礼ね。魔物(ばけもの)に化け物呼ばわりされたくないわ」
そのやり取りに、プロメテウスが声をあげて笑う。
「カカカッ。こんな小物どもにいきなり不滅のジークフリートなんて使うからだ。可哀そうに」
「あら、攻撃型の能力じゃないだけマシでしょ。第一、他の聖剣じゃ、こんなやつら一撃で死んじゃうわ」
「なんだ、殺しちゃダメのか?」
「馬鹿ね。ダメに決まってるじゃない」
エリオはまるでゴミでも見るかのように、ミノタウロスを一瞥した。
殺したら、利用できないじゃない……。
「あなたたちを殲滅することは容易いわ。でもね、私は優しいの。だから、選択肢をあげる」
「選択肢だと?」
「ええ。このまま私に殺されるか、魔王をここに連れてくるか。選びなさい」
「な……舐めるな、人間! 我々が命欲しさに魔王様を差し出すことなど、断じて有り得ぬ!」
いきり立つ魔物たちに、エリオは深い深いため息を吐いた。
全く……。生き延びる手段を自ら手放すなんて――
「本当に、救いようのない……馬鹿ね」
呟き、右手を天へと掲げた。
「滅ぼしなさい。玖の聖剣ゼウス」
途端に、空が明るくなった。
いや、明るいという表現では語弊がある。
それは目もあけられない程の、煌煌たる光。
最初のコメントを投稿しよう!