第一章 十世界の聖剣を手に入れた少女

8/45
前へ
/45ページ
次へ
 リリスと名乗る少女が胸と腰に手をあて、満面のドヤ顔を見せる。  そんな姿に、エリオは訝しげに眉をひそめた。 「勇……者?」 「そうだよ。ビックリしたかい、偽勇者さん?」  偽勇者──  最初、エリオは誰のことかわからなかった。  しかし、向けられた人差し指が自分に向けられていることから、察した。 「それ……私のことかしら?」 「他に誰がいるのさ。君でしょ、最近魔界で暴れまわっている噂の偽勇者っていうのは」 「馬鹿言わないでちょうだい。確かに私は魔物を屠り倒して回っているけれど、勇者だなんて名乗った覚えは一度も――」  言葉を遮るように、リリスがエリオの口もとにそっと指を添える。 「いいんだよ、皆まで言わなくても。勇者に──いや、ウチに憧れてしまう君の気持ちはよくわかるから」  聞いちゃいない――っていうか、なんか殺意が湧くわねこいつ……。  不機嫌を露わにし、ジト目を向けるエリオ。  すると、ずっと黙っていたプロメテウスが口を開いた。 「おい、エリオ。こいつが勇者だってんなら、腰にぶら下げてるあの剣は聖剣なんじゃねえのか?」  突如上がったその声に、リリスの肩がビクッと跳ねる。 「ななな、何!? 今どこからか声が!?」 「喋ったのは、彼よ」     
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加