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リリスと名乗る少女が胸と腰に手をあて、満面のドヤ顔を見せる。
そんな姿に、エリオは訝しげに眉をひそめた。
「勇……者?」
「そうだよ。ビックリしたかい、偽勇者さん?」
偽勇者──
最初、エリオは誰のことかわからなかった。
しかし、向けられた人差し指が自分に向けられていることから、察した。
「それ……私のことかしら?」
「他に誰がいるのさ。君でしょ、最近魔界で暴れまわっている噂の偽勇者っていうのは」
「馬鹿言わないでちょうだい。確かに私は魔物を屠り倒して回っているけれど、勇者だなんて名乗った覚えは一度も――」
言葉を遮るように、リリスがエリオの口もとにそっと指を添える。
「いいんだよ、皆まで言わなくても。勇者に──いや、ウチに憧れてしまう君の気持ちはよくわかるから」
聞いちゃいない――っていうか、なんか殺意が湧くわねこいつ……。
不機嫌を露わにし、ジト目を向けるエリオ。
すると、ずっと黙っていたプロメテウスが口を開いた。
「おい、エリオ。こいつが勇者だってんなら、腰にぶら下げてるあの剣は聖剣なんじゃねえのか?」
突如上がったその声に、リリスの肩がビクッと跳ねる。
「ななな、何!? 今どこからか声が!?」
「喋ったのは、彼よ」
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