煩懊

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将来の夢だって、もう分からない。 子供の頃はサッカー選手だとか言ってみたりもした。けどそれもとりたてて深い理由があったわけでもなく、なんとなくサッカーが好きでサッカー選手がかっこよかったからだ。一応中学までサッカーは続けてみたが、結局プロになるような人間は一握りの天才で、自分はそこには含まれていないことを知っただけだった。 いつも、自己紹介や履歴書なんかの「特技」の欄を埋めるのに苦労する。 そしてその度に、きっと兄ならスラスラ書いてみせるんだろうなぁ、と思う。 サッカーを始めたのも兄がきっかけだった。でも、結局兄より上手くなることはなかった。テストの点だって、兄に勝った試しがない。というか、兄より優れている点がしばらく考えても思いつかない。 兄の顔を見るたびに思うのだ。自分はどんな人間で、果たして何が出来るのか、と。 もはやそれすらも、分からない。 そんな人間が、これから何の為にわざわざ生きていかなければならないのか。
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