23人が本棚に入れています
本棚に追加
第二話 桃仙郷
とりあえず、僕はあやめを一階のリビングへと案内した。
朝ご飯を食べながら話をしようと思ったからだ。
「ここ座って」
「……うん」
椅子を引くと、あやめは行儀よくちょこんとそこに腰かけた。僕は台所へ行き、冷蔵庫から先日の残り物を出してテーブルに並べると、テーブルを挟んで向かい合うように椅子に座った。
「さて、食べようか。いただきますっと」
箸を手に取り、から揚げに手を伸ばしたところで、あやめの様子に気がついた。戸惑っているのか、箸も手にしないままあやめはじっと料理を見つめていた。
「食べないの?」
「見たことない料理ばっかり……」
どうやら妖怪の食文化と人間の食文化は随分違うらしい。
「食べてみてよ。夕飯の残り物だけど、そこそこおいしいと思うよ」
僕は小さめのから揚げを箸で刺し、あやめの口元に運んでみた。
おずおずとした様子のあやめだったが、から揚げをかじった途端、目がコロッと丸くなった。
「どうよ」
「お……おいひい」
あやめは目を輝かせながらもぐもぐと咀嚼し、そのままから揚げを飲み込んだ。
「これ……ゆずきが作ったの?」
「そうだよ。揚げ物は得意なんだ」
最初のコメントを投稿しよう!