23人が本棚に入れています
本棚に追加
僕は腕まくりをして、得意げにガッツポーズをして見せた。両親も妹も海外暮らしで、ここ五年間はずっと一人暮らしをしていた。そのおかげとでもいうべきか、家事は得意だった。自慢じゃないが、その辺の主婦には負けないくらいの主夫力はあると自負している。
「もう一個……食べてもいい?」
「いいよ、いくつでも食べな」
またから揚げに箸を刺し、彼女の口元へと運んだ。それをパクリと口に入れ、再びあやめが幸せそうな顔になる。上機嫌なのか、ふわふわの尻尾が軽快に揺れている。
ほんと、おいしそうに食べるな。嬉しいね――って、呑気にそんなこと考えている場合じゃなかった。あやめに聞きたいことがたくさんあるんだった。
「なあ、あやめ。いくつか質問してもいいか」
「……いいよ」
あやめはから揚げを飲み込んでから、コクンと頷いた。
「あの手紙はいつ読んだの?」
「記憶を失って……二年くらい経ってから。お部屋に隠してあったのを偶然みつけたの」
二年……。きっとお父さんに見つからないように念入りに隠したんだろうな。
「見つけた時、どんな気持ちだった?」
「最初は驚いたし……戸惑ったよ。でも、ずっと心に穴が開いたみたいな気がしてたから……読み終えた頃にはすごく自然に納得できたかも」
「そっか」
「本当はすぐにでもゆずきに会いに行きたかったけど、名前しかわからなくて……」
最初のコメントを投稿しよう!