第一章 あやめの嫁入り

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 僕は腕まくりをして、得意げにガッツポーズをして見せた。両親も妹も海外暮らしで、ここ五年間はずっと一人暮らしをしていた。そのおかげとでもいうべきか、家事は得意だった。自慢じゃないが、その辺の主婦には負けないくらいの主夫力はあると自負している。 「もう一個……食べてもいい?」 「いいよ、いくつでも食べな」  またから揚げに箸を刺し、彼女の口元へと運んだ。それをパクリと口に入れ、再びあやめが幸せそうな顔になる。上機嫌なのか、ふわふわの尻尾が軽快に揺れている。  ほんと、おいしそうに食べるな。嬉しいね――って、呑気にそんなこと考えている場合じゃなかった。あやめに聞きたいことがたくさんあるんだった。 「なあ、あやめ。いくつか質問してもいいか」 「……いいよ」  あやめはから揚げを飲み込んでから、コクンと頷いた。 「あの手紙はいつ読んだの?」 「記憶を失って……二年くらい経ってから。お部屋に隠してあったのを偶然みつけたの」  二年……。きっとお父さんに見つからないように念入りに隠したんだろうな。 「見つけた時、どんな気持ちだった?」 「最初は驚いたし……戸惑ったよ。でも、ずっと心に穴が開いたみたいな気がしてたから……読み終えた頃にはすごく自然に納得できたかも」 「そっか」 「本当はすぐにでもゆずきに会いに行きたかったけど、名前しかわからなくて……」     
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