第一章 あやめの嫁入り

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「うん。お父さん、力が強すぎるから、こっちの世界に影響出ちゃうって言ってた。だから……たぶん来ない」 「ふうん。そうか」  そうなると、やっぱりこの方法が一番いいか。  僕は考えていたひとつの案を提案することにした。 「あのさ、あやめ。ここで一緒に暮らさないか?」 「……えっ!?」 「桃仙郷に帰れないのなら、こっちの世界に住む場所が必要だろ」 「そうだけど……。でも……いいの?」  あやめが申し訳なさそうな顔をする。  気を使わないで良いように、僕は満面の笑みを浮かべて頷いた。 「ああ。優しくするって約束しただろ」 「……ありがとう、ゆずき」  そう言ったあやめの表情はとても嬉しそうで、かわいらしく見えた。  思わず、僕の胸が小さく跳ねるほどに―― 「い、いや、こちらこそありがとう。おかげで聞きたいことは大体聞けたよ。中断して悪かったね。さあ食べよう」  慌てて話題を逸らし、ご飯を口の中にかき込む。喉に詰まりかけて麦茶を一気飲みしたところで、あることに気がついた。あやめが食べずにじっと箸を見つめていたのである。 「もしかして、桃仙郷には箸とか無かった?」 「これ、はしっていうの?」  やっぱりか。  予想通り、あやめは箸の存在を知らなかった。 「箸は慣れが必要だからな……。ちょっと待ってろ。何か別のを用意するから」     
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