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「とってもね、嬉しかったの。わたしも……好きだったから。それが、わたしの初恋……」
なんだ。急に身の上話――っていうか、自慢話が始まったぞ。しかも小さい頃って……その告白したガキも随分マセてやがんな。爆発すればいいのに。
白い目を向ける僕の気など知りもしないで、少しはにかみながらあやめは言葉を続けた。
「でもね、その後すぐに離れ離れにされちゃったんだ。それ以来……ずっと会ってなかったの」
「ふうん。それは気の毒だったね」
「うん。だからね……こうやって会いに来たんだよ」
「そっかあ…………って、え?」
今なんて言った?
首を捻る僕を見て、薄い笑みを浮かべるあやめ。
すると、彼女は僕の耳元まで顔を近づけ、だからね、わたしの初恋の人は――と前置きをし、今にも消えそうな小さな声で。くすぐったくなるようなか細い声で。こう囁いた。
ゆずきだよ、と。
「…………ええ!? ぼ、ぼ、ぼ、僕っ!?」
一瞬の間を空けて意味を理解した僕は、ベッドの上でズリズリと後ずさりした。そんな僕の様子を見て、あやめがクスクスと可愛らしく笑う。そして、少し恥ずかしそうに頬を染めながら、小さく頷く。
「うん。あの時……わたしに告白してくれたのも、わたしが生まれて初めて好きになったのも……ゆずきだよ」
「……っ!」
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