第一章 あやめの嫁入り

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「とってもね、嬉しかったの。わたしも……好きだったから。それが、わたしの初恋……」  なんだ。急に身の上話――っていうか、自慢話が始まったぞ。しかも小さい頃って……その告白したガキも随分マセてやがんな。爆発すればいいのに。  白い目を向ける僕の気など知りもしないで、少しはにかみながらあやめは言葉を続けた。 「でもね、その後すぐに離れ離れにされちゃったんだ。それ以来……ずっと会ってなかったの」 「ふうん。それは気の毒だったね」 「うん。だからね……こうやって会いに来たんだよ」 「そっかあ…………って、え?」  今なんて言った?  首を捻る僕を見て、薄い笑みを浮かべるあやめ。  すると、彼女は僕の耳元まで顔を近づけ、だからね、わたしの初恋の人は――と前置きをし、今にも消えそうな小さな声で。くすぐったくなるようなか細い声で。こう囁いた。  ゆずきだよ、と。 「…………ええ!? ぼ、ぼ、ぼ、僕っ!?」  一瞬の間を空けて意味を理解した僕は、ベッドの上でズリズリと後ずさりした。そんな僕の様子を見て、あやめがクスクスと可愛らしく笑う。そして、少し恥ずかしそうに頬を染めながら、小さく頷く。 「うん。あの時……わたしに告白してくれたのも、わたしが生まれて初めて好きになったのも……ゆずきだよ」 「……っ!」     
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