23人が本棚に入れています
本棚に追加
跳ねる僕の心臓。見なくても、今、自分の顔が真っ赤に染まっているとわかる。
う、うわっ、どうしよう……人生で初めて人から(妖怪だけど)好きって言われた。
正直飛び上がるくらいに嬉しかったが、反面、じわじわと申し訳なさも込み上げていた。
「ご、ごめん。好きって言ってもらえてすごく嬉しいんだけど、えっと――」
「……いいの。わかってるよ」
僕の言葉を遮るように、あやめはフルフルと首を振った。
「覚えて……ないんだよね?」
「ど、どうして――」
「わたしたちは消されてるから。お互いの……記憶を」
「はっ!?」
あまりに急な展開に、頭がついていかなかった。
「ち、ちょっと待ってくれるか!? 話が全く見えない。それって何年前のことだ? いや、それ以前にいったい誰が……?」
「会ったのは、七年前。記憶を消したのは……わたしのお父さん」
「お父さん!?」
「うん。それがルールだからって。人間と妖怪が……深くかかわらないようにするための」
「な、なんだそれ……」
その突拍子もない話に、ただただ呆然としてしまう。
いや、何となく言いたいことはわかるけどさ。実際に妖怪なんてものが存在するとしたら、そういうルールがあってもおかしくはないだろうし。
ただ、ひとつだけ腑に落ちない点があった。
最初のコメントを投稿しよう!