第一章 あやめの嫁入り

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 跳ねる僕の心臓。見なくても、今、自分の顔が真っ赤に染まっているとわかる。  う、うわっ、どうしよう……人生で初めて人から(妖怪だけど)好きって言われた。  正直飛び上がるくらいに嬉しかったが、反面、じわじわと申し訳なさも込み上げていた。 「ご、ごめん。好きって言ってもらえてすごく嬉しいんだけど、えっと――」 「……いいの。わかってるよ」  僕の言葉を遮るように、あやめはフルフルと首を振った。 「覚えて……ないんだよね?」 「ど、どうして――」 「わたしたちは消されてるから。お互いの……記憶を」 「はっ!?」  あまりに急な展開に、頭がついていかなかった。 「ち、ちょっと待ってくれるか!? 話が全く見えない。それって何年前のことだ? いや、それ以前にいったい誰が……?」 「会ったのは、七年前。記憶を消したのは……わたしのお父さん」 「お父さん!?」 「うん。それがルールだからって。人間と妖怪が……深くかかわらないようにするための」 「な、なんだそれ……」  その突拍子もない話に、ただただ呆然としてしまう。  いや、何となく言いたいことはわかるけどさ。実際に妖怪なんてものが存在するとしたら、そういうルールがあってもおかしくはないだろうし。  ただ、ひとつだけ腑に落ちない点があった。     
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